Pivo! 2009年4月号 4年の歳月を経て再び関東1部へguide/history2009p

以下、フットサルマガジンPivo!の取材内容

フットサルマガジンPivo!に掲載された内容
1部昇格、かたや2部降格

コロナFC/権田(以下、権田)は2006年の関東リーグ参戦から3年、高いリーグで戦い続けるも下位争いに甘んじてきた。年々チームの平均年齢は上がっている。2部に落ちれば、ずるずると下がってしまう可能性もある。一方のZOTT(以下、ゾット)も、関東リーグで戦った2004年、1年での都リーグ降格を味わっている。2006年の2部参入を経て、再び1部に上がれるチャンスが、巡ってきた。ゾットにとって4年間は決して短くはなかった。互いの多いが交錯した試合は、立ち上がりから緊迫していた。

死闘の果ての歓喜

序盤からプレスをかけ合い、ハイペースになっていた。ゾットがスピードのある攻撃から何度も決定権を作るが決めきれない。逆に権田もカウンターやセットプレーからチャンスを作るが、ディフェンスを崩しきれない。なりふりは構っていられない。両者は気持ちをぶつけ合っていた。

互いに体力を消費する。それゆえにセットを分け、時間で入れ替えながら戦っていた。攻守が激しく替わる展開だが点は動かず、試合は前半を終えようとしていた。残り数秒、ゾットがカウンターから持ち込み松田がゴールを奪った。ゾットにとっても願ってもない先制点だった。当然試合が終わったわけではない。むしろここからが本番だった。後半開始から権田が仕掛け出し、徐々に得点のにおいがし始める。31分、ボールを持った新井が、わずかなディフェンスの隙間にパスを通す。ゴール右で待つ金子は決めるだけだった。権田がようやく同点に追いついた。

引き分けでは権田が残留という規定。ゾットが攻める必要がある中で、勢いは権田にあった。しかし意外にもゾットの選手は冷静だった。「点を取られても落ち着こうと話していたし、ボールをゆっくりセンターサークルに持っていき少しでも話をしようとした」と荒木が振り返る。それとは裏腹に、ベンチを見守る監督兼選手・清野には少しの焦りがあった。「確かに、タイムアウトを取るまではそうだった。ただタイムアウトで集まったとき、みんな不安な顔じゃなく絶対いけるって顔をしていたので、正直僕はドキドキでしたけど、みんなが絶対いける絶対いけるって言ってたので信じた」(清野)。35分にタイムアウトを取ったゾットは、5分間出ずっぱりのファースとセットを投入し続けた。

そのセットには米谷がいた。「米谷が小笹と荒木と丸山(のファーストセット)に入ったほうが流れがいいが、ファーストとセカンドでバランスを取るために米谷をセカンドに入れている。ただ点を本当に取りたいときは米谷を入れる」(清野)。埼玉県リーグでチームの柱として得点し続けた米谷は、今季からゾットに加入。関東2部でもその得点能力を発揮していた。ゾットはとにかく1点ほしかった。

その清野の思いがピッチで体現された。タイムアウト明けから数十秒、ゾットはゴール前左でフリーキックを得た。「最初はケアするため下がろうと思ったが、あっ絶対ここに来るって感じてそこにいたら来たので、あれはみんなで取った点」(米谷)。丸山が右サイドに展開したボールは、ファーに詰めていた米谷のもとへ吸い込まれるように渡った。米谷は4年前からの歴史やチームの重みを知らない。ただ「前日、いろんな人に当時からのことを聞いた。思いが伝わってきたし重みは一緒に背負っている」と語り、だからこそ「潤さん(清野)のために昇格したい気持ちがあり、それが力になった」。2対1とゾットが勝ち越すと、清野はすでに泣いていた。ベンチも含め全員で戦っていた。勝利は決まっていないが、込み上げる感情を抑えることはできなかった。「前回の関東昇格を知らないメンバーに、その瞬間をピッチで味あわせたい気持ちがあった。自分がピッチに立ちたいとかは全然なかった」(清野)。ピッチに立つファーストセットは、荒木、丸山など、昇格を知らないメンバー中心の構成だった。ただ、その瞬間は簡単には訪れない。

38分、荒木が自陣でファウルを犯しゾットのファウルが5を記録。これ以上失点できない状況で、緊迫感は高まった。中川、新井など、かつてゾットと同じ大学リーグで雌雄を争ったメンバーが再びピッチでぶつかり合う。当時ゾットにかなわなかった権田だが立場は上。それでも挑戦者のごとく立ち向かう。この試合は、技術の差うんぬんは関係ない。互いの気持ちにも差は見られない。もはや勝敗はまったく想像がつかなかった。

「奇跡が起きた。気持ちが乗り移ってくれた。体に当たってくれたんです」。試合終了直後、ゾットのゴレイロ広田が興奮しながら話す。残り3秒、権田のコーナーキックからのシュートは広田の体に当たってラインを割った。再度コーナーキック。再び枠に強烈なシュートが飛んでくる。もはや反応というレベルではない。体のどこともわからない場所に当たり弾かれたボールは、無情にも外に転がり、同時に終了の笛が鳴り響いた。

清野が待ち望んだ歓喜の瞬間が訪れた。その時ピッチに泣き崩れる権田とゾットの選手たちの姿があった。同じような光景も、涙の意味はまったく違っていた。

「ゴレイロの安藤がケガをして広田が入って、でも絶対大丈夫だと思った」(清野)。広田は正ゴレイロではないがゴールを守りきった。ただ最後の瞬間、体にボールが当たったのは必然ではない。天が味方したというような、わずかなことだった。権田のゴレイロ清水は、歓喜に沸くゾットを背にいつまでもピッチで放心していた。ほんの数センチの出来事が「勝敗」の2文字を色濃く表した。「ほんとに長かった。まだ信じられない」。興奮冷めやらぬ清野が言う。今季序盤、チームはつまずいていた。決して調子が悪くはなかったが、3戦してすでに2敗。「そこが転機だった。このメンバーでやることの面白さをもう一度思い出せたことが勝因」(荒木)。最終節こそ引き分けるが、それまで7連勝して2位になった。行方は最後まで分からなかったリーグは、本当に長かった。その苦難の末のこの入れ替え戦だった。

「みんなに感謝したい。最高の1年になった」(清野)。全てを経験した清野が言うからこそ深みがある。かつて大学リーグで競った両者の序列は元に戻った。来季、権田は2部で、ゾットは1部で戦う。かつての盟友が再び交わる日が来るのだろうか。ただそのときは、入れ替え戦ではなく同じ1部の舞台でと誓い合ったはずだ。

クラブヒストリー

学生サークルから始まったZOTT。10年以上続くクラブチームの歴史を紐解く